兄目線でアニメ
 
アニメに対する、視点、論点、あと,メイドさんとか、自作PCとか、鉄道とか酒とかな話。
 



2007年7月19日を表示

第一章、『詐欺師姉妹』①

1 詐欺師姉妹

まず登場人物について話しておこう。この小説は、私小説だから、まず主人公の「僕」がいる。そして、あと一人重要人物が居て、彼女の名は、といっても僕は彼女の名を知らないので、役職名で「メイドさん」と呼ぶことにする。

「メイドさん」といっても、秋葉原とかのメイド喫茶にいるメイドさんとは別物だ、あれがメイドさんを題材にして作られた、作り物のメイドさんなら、我が家のメイドさんは本物のメイドさんだ。と言ってみたいところだけれど、彼女も単なるそういった「まがい物」の一つだったのかもしれないな。
あと、ここまで「メイドさん」を連発しておいて、小説を読んでいるあなた方に、こういうことを言うのは言い訳がましいかもしれないけれど、この小説は、所謂、オタクの読み物とか、アキバ系の話では無いのであしからず。
確かに、僕自身オタクであると思うし、「メイドさん」という存在自体、極めてオタクくさいニュアンスがあるけれど、別にこの作品でそういったオタク系のことを中心に語ろうとか、僕は思っていないのだ。「じゃあ何故、こんな誤解を招くような事を書いたのか?」と訊かれれば、それは僕がオタクだから、日常にオタク的要素がある以上、私小説を書けば、そういう単語も出てしまう方が自然だと思ったからで特に拘りとかはない。
そうだ、僕はもう子供でないから、自分がオタクであることを認識できても、あえてオタクであることを誇るほどの元気はないのだ。
だから、もし、この作品が完成でもして、何となく僕が出版社に持って行ったりして、主人公がオタクという設定は、蛇足だからそういう描写は削ってくださいといわれたら、僕は「メイドさん」を「家政婦」とあまり躊躇なく書き換えてしまうかもしてない。

まあ、事前の説明はこれくらいにして、そろそろ僕とメイドさんの奇妙な同居生活についての話をいよいよ始めようと思うのだ。



僕とメイドさんの出会いについて話すには、まず僕が学生時代の頃まで遡らなくてはならない。
始めに、断っておきたいのは、別に僕は、このメイドさんとの出会いのエピソードで、そんな怖い話をするつもりは無かったって事。
僕としてはどちらかといえば、SFに近い話にするはずだったのに、ただ結果的に怖い話なってしまっただけなんだと思う。
まあ何で、メイドさんとの馴れ初め話がホラーに成るんだと改めて考えれば、別にこの話は怖い話じゃないのかもしれない。そう、きっと、この話を怖いと思っているのは、本当は僕ぐらいなもので、他の皆にとっては、こんな話は単なる奇妙な笑い話にしか成りえないものに違いないのだ。
そうさ、この恐怖は、僕と同じような経験をした者か・・・はたまた人形作家ぐらいにしか理解できないものなのだろう。
だから、この話を怖い話か、そうでないかを決めるのは、この文章を読んでいる、あなたのすることであって、それでも、どうして僕がこの話が怖いと感じるのかと訊かれれば、この話を読み進めてもらえばわかるけど、とりあえず、僕がメイドさんと出会う前、もう一人別のメイドさんと知り合った話からしてみようと思う。

そう、台湾から連れられてきたメイドさんの話。

メイドさんと僕が出会ったのは、さっき話したように、まだ僕が学生の頃だった。その頃僕はといえば、一人暮らしの自由さや寂しさや、サブカルチャーへの心酔から、そのころ仕切りに社会で話題に上げられ始めていた、メイドさんというものに興味を持ち、一応大学生として、そんな興味の対象のメイドさんを、学術的に研究しようと考えていた。僕は良くも悪くも勉強熱心な学生だった。
だから、その研究のために、本物のメイドさんに会って話がしたいと思っていた。そして、そんな折、都合よく現れたのが、あのメイドさんだった。
メイドさんと僕がどのようにして出合ったのかという話はどうでもいいとして、そのメイドさんは、本当にメイドさんらしいメイドさんで、まるで漫画やアニメから飛び出したみたいに、顔は童顔、背も高くない割りに、西洋人みたいな金髪で、肌も少し白めで、馬鹿みたいにスタイルが良く、特に胸は大きくて、見ているだけで心が弾んだ。

話によれば、そのメイドさんはアジア人の母が西洋系の男性に強姦され生まれた子供なのだという。生まれたのは台湾だが、物心ついた頃には、この国に渡ってきて、色々あって今は主人の下で働いているという事だ。まるで夢見たいな話。
僕はそんな、恰好の研究対象であるメイドさんと知り合ってから、研究の名目で何度か逢い、喫茶店や居酒屋で話をした。その時のメイドさんの僕に対する態度は、とても良好に見えたので、いつもは猜疑心に支配されている僕も、今考えれば迂闊なことだけれど、何時しか心を許していたのかもしれない。
だって、それまで女性と交際した事もなかった僕が、こんな可愛らしいメイドさんと楽しく二人で酒を飲んでいるのだから。

これはやっぱり、夢みたいな話だ。

そう、あの時メイドさんは正しく僕にとって友人だった。しかし、その友情という、僕からの一方的な一種の幻想は、あの居酒屋での会話で、いとも簡単に、崩れ去ってしまう。
今思えば、当然の結末だと思う。けれども、あの時の僕にとっては、勘違いであったとしても、メイドさんは、繰り返すけれど紛れも無く良き友人だったのだ。



7月19日(木)21:10 | トラックバック(0) | コメント(0) | 私小説 | 管理


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