兄目線でアニメ
 
アニメに対する、視点、論点、あと,メイドさんとか、自作PCとか、鉄道とか酒とかな話。
 



2007年10月28日を表示

街角の二人を眺めるに。

「例えば賭けをしてみよう」彼女は、大きな赤い飴玉をほおばりながら言う。僕はその飴玉のあまりの見事な赤とその赤に染められていく彼女の唇と舌に見とれてしまって、何も答える気にならなくなる。

「簡単に言うと、この後私たちがどうなるかについて賭けようじゃないかって話なの。どうなるかって言うのは何となく察しが付いてるだろうけれど、それをそのまま真に受けても賭けは楽しくないからね、もっと柔軟な発想で、そうそう、何ていうか泊まり先の予約もしないで旅行にでも行く感じが大切なんだな。」彼女の口の中の飴玉は、彼女の甘い唾液に溶かされ続け、見る見るうちに小さくなってゆく。

「それってどういうことだい?」

「この飴玉を賭けてあげてもいいわって事。」わざとらしく彼女は上目遣いで僕を見る。これはいい症状じゃないな、何ていうかな、本当に嫌な感じだ。甘いものってのはこうだから困るんだよ。

「それで、君はどっちに賭けるつもりなんだい?どれによって僕の考えも・・・」

「バカ言わないで!あなたが差し出すものはもう決まってるじゃない。」

「一体何の話だよ。」

「何の話も何も、私はこの飴玉を賭けているんだから、あなただってそれ相応の・・・例えば何か財産的なものがいいかしら。」彼女が喋るたび、その口にほおばられた赤い飴玉が、ちらりちらりと見え隠れするから、僕もその妙艶な誘惑に少しばかり心がかき乱される。

「じゃあ、仕方ない。僕はこの千円札をかけようじゃないか」財布から僕が、その尊い紙切れを引き抜くと彼女は直ぐに僕に擦り寄りその紙切れを僕の手から掬い取る。

「ありがとう、感謝するわ。」そう言って、彼女は勝ち誇ったような笑みで僕に言った。なるほど、どうやら賭けは僕の負けらしいいね。

でも、お互いに大した物を賭けていないんだから、結局こんな賭け、大した賭けじゃないんだよ、ねえ、そうは思わないかい?でも悔しくないとは言わないよ、だってもしかしたら、僕はあの赤い赤い飴玉を、彼女から口移しで貰う事が出来たかも知れないのだから。

まあ、色々言っても負けてしまった僕にはどうする事もできないとは思うんだけれどね。



10月28日(日)22:12 | トラックバック(0) | コメント(0) | シュールレアリズム | 管理


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