美の奇人萌たち |
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| 今日の一枚、萌兄作
『隣人の食卓』
萌兄の作品の原点は、陶酔。それはエロチックな陶酔でもあり、アルコールによる陶酔でもある。
この絵にはその二つの陶酔が描かれています。
一つは赤い化け物のような男が、エルフメイドさんの長い耳たぶを甘噛みし、それを肴に、焼酎を啜っている。アルコールによる陶酔。
もう一つは、性感帯の一つである耳を刺激され、性的な快楽をおぼえているエルフメイドさんの、エロチックな陶酔。
両者の陶酔は似ているようで、全く別のもの。この絵では、耳を噛んでいる加害者である、男は、痛々しいほどの姿で描かれ、目は今にも泣き出しそうな、悲しみを秘めています。
しかし、それとは反対に、被害者であるエルフメイドさんは、まんざらでもない表情を浮かべ、その瞳にためている涙は、喜びの涙にさえ見えてきます。
人物の視線を見てみましょう、男の視線は空虚に虚空を泳いでいます。それに対し、エルフメイドさんの瞳は、横で自分の耳を噛んでいる男を見て居ます。
孤独を恐れ、逃げ出すための男の陶酔。自分を利用してきた加害者さえ、自分の快楽に変えて、包み込もうとする、エルフメイドさんの陶酔。
両者の陶酔、立場はどちらも絶望的といえるでしょう。しかし、私たちが隣人として、彼等の食卓を覗いた時、彼等の自分本位の陶酔は、隣人二人の物語になるのです。
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3月30日(金)18:35 | トラックバック(0) | コメント(0) | 漫画、イラスト | 管理
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