兄目線でアニメ
 
アニメに対する、視点、論点、あと,メイドさんとか、自作PCとか、鉄道とか酒とかな話。
 



2007年8月28日を表示

第五章、家庭の洗濯機⑦



 徒歩の帰り道は丁度いい酔い覚ましになる。僕はあまり酔っていないから、メイドさんに何も話しかけたり出来なかった。メイドさんもあまり酔っていないから、僕に話しかけてきてくれない、いつもこんなふうに僕らの関係は、アルコールが不十分だと全く進行しないのだ。
 そして最近、僕ら二人は互いにアルコールをある一定のラインで控えるようになった。二人で「もう若くないから飲みすぎないほうがいいね」と言い合ってカモフラージュしているけれど、結局、僕らに親になる勇気は無いのが本当の理由なんだと思う。

そう、出会いという非日常から、引越しを経て、何とかルーチンワークを作り出した、この日までの僕等の生活は、何とかホースで渦の中から出されそうでも歯を食いしばって渦から離れないようにしがみ付く水の塊だった。
でも、サイホンの原理は、重力とか、大気圧とかそういう凄い強力な力が働いているのだ、努力とか根性で何とかできるもんじゃない。

いつものボロマンションに帰ると、管理人室の前で、管理人の奥さんが僕らを呼びとめ簡潔に述べた「正式に取り壊しが決まったんですよ。」
このマンションが激安な理由。それは再開発が周りで進み、ここも何時壊されるかわからないそういう不安定なところが所以なのだ。

頭の中の洗濯機に、管理人のおばさんは強引にホース突っ込んだ。ホースの先から水が飛び出してくる!
メイドさんの口にはその水は溜まって凄い内圧だ、耐えかねて彼女は口を開いた「コンビニ行ってこよう、ビール買い込まなきゃいけないんだ!」彼女は走り出し、僕はそれを追う。
 コンビニの冷蔵庫は密閉型、よく冷えてるビール。そうそう、僕みたいな人間は忘れやすいから、こうやって酒を飲めば、そういう陰鬱なものは吹き飛んでしまうんだ、きっとそうできない人たちだけは、哲学をやり続けていられるんだと思う・・・
「バカっ、今はそんな場合じゃないでしょ、冷えているやつ買い込んで家の冷蔵庫にしまったら、今度はスーパーに行ってケースで買って、やる事はいくらでもあるんだ。」

水のすっかり減った洗濯機。水は減った分、軽くなってしまったためか、動きはどんどん大きくなり、どんどん波は強くなっていく
洗濯機の中の残りわずかな渦(それもこれだけ強く回っていたら、水が外に漏れ出して、もう長くは維持できそうもない)の事を思いながら、ビールの入った袋を抱えて家への途中、空を見る。

今にも雨が降りそうだ、まだスーパーにも行かなきゃならないのに、雨はずざああああああって、降ってくるんだよ、ずざああああああって、水が流れてゆく、ずざああああああっざぶざぶ、洗濯機が回る音、雨のお陰で洗濯機の中には水がいっぱい。
そういえば、一緒に暮らすようになってから驚いたんだけど、メイドさんは意外と気にしないほうなんだな、僕の下着も自分の下着も関係なしに洗濯機に放り込むんだ。

 ずざああああああっざぶざぶ、洗濯機の中で絡み合う主人とメイドさんのパンツ。

 ずざああああああっざぶざぶ、渦の中には愛がいっぱい!



8月28日(火)20:59 | トラックバック(0) | コメント(0) | 私小説 | 管理


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