第八賞 綺麗な便器のままで② |
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| 引越しの準備なんて、本気ですれば本当に直ぐ出来てしまうものだ、僕とメイドさんは互いの忙しい生活の合間を見つけながら、何とかきっかり一週間で、荷造りを終了させた。 「こんなふうに二人で一週間、真剣に作業するなんて、あの子を作ったとき以来だな。」彼女は微笑みながら「明日はお別れだから今日は盛大に乾杯しようじゃないか、すこし寂しいけれど、すがすがしいな。もし君が今あたしを抱きたいって言ったら『いいよ』っていっちゃうかも。」僕も微笑んで、そんなことより乾杯しようとグラスを傾けた。
夜はとて静かだ、いつもはこんなにも静かだとは感じないから、今日はやっぱり特別な日なのだろう、どう特別かと聞かれたら解らないけれど、きっと特別な日なんだろうな、アルコールの靄の中、僕らは互いの輪郭を眺めながら、本当にゆっくりとウイスキーを傾けて、互いに気づかないうちに、それぞれの床に入り、いつの間にか一人一人の朝を迎えた。
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11月4日(日)22:21 | トラックバック(0) | コメント(0) | 私小説 | 管理
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