兄目線でアニメ
 
アニメに対する、視点、論点、あと,メイドさんとか、自作PCとか、鉄道とか酒とかな話。
 



第二章、『脱皮』④



僕は寝つきが悪いほうだけど、その日は特に酷かった。明日、朝から何かしようと思うとこうなるのだ。
寝転がり続けて、早く意識が遠のかないか祈るだけ。一度トイレに行くために部屋の電気をつけた。午前二時過ぎになっていた。ため息をついてしまう、けれどもトイレから帰ると急激な眠気が僕を襲う。僕はいい気分になった。



また目が覚めた、まだ暗いから、あれから二時間もたってないのだろう、ガッカリする。暫く寝転がり目を瞑ってみたが、一向に眠気が襲ってこない。僕は夜の長さにうんざりしたけれど、そのあともっと深刻な事態に襲われる。

背後から、かさこそ、かさこそと、布の擦れ合う物音がする。僕は金縛りにあったわけでもないのに、振り向く事が出来ない。事態が予想できたからだ。
現在製作中の人形は、今は言ってしまえば、ばらばら死体の状態だ。それが動き出したのだ。そんなわけ無いと頭でわかっているのに、頭の中に鮮明な画像が浮かび上がるみたいに、予想できてしまう。
いや、こんなことは非科学的だ。哲学をやっている僕が合理的でなくてどうする。振り向けば、振り向いてみてやりさえすれば、そんな幻想消えるに違いない。見ないから無いという決定が出来ないのだ。
見てやりさえすれば・・・でも、もし見てそれが本当におこっていたら、僕は逃げ場を失ってしまう。でも、怖くても、いや、怖いから見ずにはいられないのだ。

僕は目を瞑ったまま振り返る。先ほどの物音はもう無くなっている。ははは、賭けは僕の勝ちのようだ。そして勝利宣言のため恐る恐る目を開けた。
僕は驚愕した。人形は出来上がっている。しかも僕等が作っていたのはせいぜい子供のサイズほどのものだったのに、普通の人間の大きさぐらいになっている。

裸で横たわる女性型の人形は、まるでダッチワイフみたいだ。

そう思うと、怖さが吹き飛んだ。童貞とダッチワイフは永遠の共犯関係だ。僕は彼女に近づいて抱きかかえる。生暖かく柔らかい感触、しかも重さも人間並だ。しかし表面の手触りや質感はまるっきり布だ。
きっと寝ぼけて神経が混乱しているのだろう。そして僕はそんな都合のいい彼女を自分のベットに寝かせた。こう見ると、以前合っていたメイドさんに凄く似ている、それと同時に彼女に合っていた頃は凄く前のことに思える。

気分が悪くなりそうだが、これでやっと僕は彼女の密室で塞がれた情事に介入する事が出来るのだ。彼女の大き目の乳房を両手で鷲摑みにする。素晴らしい感触だ流石、高級な低反発ウレタンを切り出して作っただけはある。明日、製作者に礼を言っておこう。
乳房を揉むのに満足すると、今度は彼女に四肢を絡ませ抱きついた。すると僕はもう我慢できなくなって、パジャマのズボンをパンツごと下ろす。入り口を探しに、彼女の下半身に目をやると、先ほど作られた女性器よりも数段リアルなそれが目の前に現れた。しかも人形くせして濡れている、僕はもう止まらない。
考えてみてほしい、人間の愛なんて情熱や性欲やに左右され、期間制限付きの仮初のものだ、でもコンクリートや鉄、シリコンやゴムはどうだ、建物は無償で僕らを雨風から守り、支えてくれるし、車のゴムタイヤは磨り減って自らの体がボロボロになるまで僕らの足になってくれる。そうさ、彼等の干渉の無い、奉仕の精神こそ本当の愛だ。
相手がダッチワイフなら、相手が無機物なら、こんな僕にも無償の愛を向けてくれているはずだ。

そうさ、愛という言い訳があれば人は何でも出来るものだ。その証拠に街の人間どもは、セックスしたいがために恋人を作っているじゃないか。そいつ等に比べれば僕はどれだけ純粋か。
僕は何のためらいも無く、避妊具もしないで、彼女を突き刺した。中はとても柔らかく暖かい、我慢はしたが直ぐに破裂してしまった。

そのまま二人は抱き合ったままだった。いつの間にか彼女の方が上になっている。女性というのはどんな状態でも強かなものだな。
彼女の髪を撫でる。とても愛らしい、頭頂部のつむじ付近、何か金属製の小さな板みたいなものが指に触れる。なんだろうと思い摘んで動かしてみると、彼女の髪の分け目、首筋、背骨、尾骶骨のラインに沿ってスライドし下ろすことができる。どうやら僕が摘んで動かしたのはファスナーの枝らしい、一番下まで降ろされたファスナー、昆虫の脱皮のように、背をのけぞらせ布製の古い皮膚から抜け出してきたは、一緒にこの人形を作っている彼女。道理でここまで暖かくて軟らかい訳だ。

ああ、これじゃ、本当に思う壺じゃないか、美人局に引っかかったのか、強姦罪で脅迫されるのか、それとも妊娠を理由に慰謝料だろうか?もう、どっちにしろ遅すぎる。

リーン、リーン、リンリン、美人局の相手役がやってきたのか、それとも警察のサイレンか、堕胎のための救急車か?電子音はしばらくなり続けると止んだ、しかし、だからなんだというのだ、もうどうにもならない、「ねえ、起きて」気ぐるみから出てきた彼女は、そう言った。もうとっくに起きてるさ、起きて君と抱き合ったじゃないか、「ねえ、大丈夫?」平気なはずが無いよ「ほんとに起きて!」



7月28日(土)09:19 | トラックバック(0) | コメント(0) | 私小説 | 管理

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