古くなってく、 |
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| 十の位が二に成って、何度目かの誕生日、僕らはケーキを箸で突付きながら、ウイスキーを飲んでいる。きっと来年の誕生日をこのメンバーで迎える事は無いなと僕には何となく確信がある。
「ハッピーバースデー、といっても、もう年取るのが嬉しい歳じゃないか、」
それはそうだ、もう僕らは歳をとることで大きくなる事は無い。僕らはもう古くなる一方。
二十歳のときまだまだ自分は若いと感じた。けれどもそれから、一年ごとに僕は少しづつ老いて少しづつ疲れていった。
でもその代わりに、「生き方」みたいなもの覚えて、年を取るたび僕は利口に生きられるようになった。
だから、僕は歳をとることを辛いとは思わない。そう大した感慨なんて無い、でも、ただ淋しかった。
昔仲の良かった友人と疎遠になってしまったような感覚かもしれない。
そしてこれからも歳をとるたび、僕は利口に成って淋しがり屋になってゆく。それは目の前でウイスキーを飲んでいる彼女もきっと同じ。
「誕生日プレゼント!アイラのモルト。」
うれしい、プレゼントと言うからてっきり抱かせてくれるのかと思ったよ。
「何か、作ろうか?」
子作りじゃなくて?
「ソーセージでもやきましょ。」
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5月8日(火)20:56 | トラックバック(0) | コメント(0) | シュールレアリズム | 管理
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