兄目線でアニメ
 
アニメに対する、視点、論点、あと,メイドさんとか、自作PCとか、鉄道とか酒とかな話。
 



第四章、『動物実験』③

さて、どうしたものか。罠がどんどん露骨になってゆく。このままでは既成事実を作られかねない。そもそも何で、同居する必要があるんだろうか?
「家を出たいなら普通に一人暮らしすればいいじゃないか。」
「あたしはあの子の母親だし、あなたは父親でしょ、一緒に暮らして変な事があるのさ。それに一緒に暮らした方が経済的に助かるじゃない。」彼女の視線の先には、人形が僕のベットで昼寝をしている。
「そんなの変に決まってるじゃないか、恋人同士でも夫婦でもない男女が同居するだなんて、そりゃ経済的に助かっても、道徳的にやっちゃならんことさ。」
「じゃあ、君の道徳では性的関係のある女性となら同居してもいいってことなのかい、それなら今からセックスすれば問題は無くなるな。」彼女はシャツのボタンを外し始める。これは思ったより危険な情況だ、何とか路線修正しなくては。
「いや、そういっているわけじゃないよ。ただ身分の問題だね。男というものは、一緒に暮らす女性にある程度の身分を認めてもらわないと同居できない決まりになっているのさ。例えば夫とか婚約者とか恋人という女性との繋がりが、直接的な地位が必要なのさ。君の言うような子供を通した間接的な理由では駄目なんだよ、現に離婚した夫婦は子供がいても一緒に暮らさないだろう。」
 「夫に婚約者に恋人か、確かに君をあたしのそういったものに昇格させるのは難しいかもしれない。他に同居者に相応しい地位は無いのかな?」と懇願するような目で彼女。僕はその答えを知っている。しかし、ここで答えてはいけないのだ、その答えが僕にとってどんなに耽美なものであったとしても・・・彼女は考え事を始めたのか、部屋の中をせわしなく歩きはじめた、これは危険だ、こともあろうに、目の前で昼寝中の人形が大ヒントであるあれを着ているのだから、気づかれられてしまっては一大事だ。

 「まあ、いいじゃないか今日結論を出さなくてもね。」
 「ああ、そうか。」エジソンのように頭の上の電球が光るように閃いたような表情の彼女「そういえば君、メイドになれば、抱けるとか何とか言っていたな。」くそっ、何てことだ大当たりだ、召使と主人なら、たとえ男女が一緒に暮らしていたとしても問題は無いのだ。
「よし、あたしは今日から君のメイドだよ、依存は無いね。」勝ち誇ったように彼女は言った。せっかく感ずかせまいと、最近はメイド服をたんすの奥に厳重に隠しておいたというのに、これではその努力も無駄に終わったということだ。
 こうなっては言い訳がましいことを言っても仕方ない、もう負けは決まってしまったのだ、今更後悔しても始まらない、ならばこれ以上負けが込まないようにする事に集中しようじゃないか。
「そうさ、メイドさんなら一緒に暮らしてやらない事はないね。でもそれには条件がある。メイドさんは主人の命令には絶対服従する覚悟が無ければ出来ない仕事なのだよ、それくらい大変なのなんだ。自分は主人の奴隷であるぐらいに思わなければいけないよ、甘ったれは許されないのさ、あと暑い日でも、あの厚ぼったいメイド服を着ての仕事だ、脱水症状の危険だってあるわけだしね。」
「いいよ、何でもいう事を聞こうじゃないか。その代わりあなたはあたしと暮らす事になるけれど依存はないでしょうね。」僕は首を縦に振るしかなかった。前々から憧れていた存在を手にしてしまうというのは、思ったより淋しく、そして迷惑なものなのかもしれない。
「何しょんぼりしてるの?」
「ひとさらいって知ってるかい?例えば・・・東欧の・・・そうチェコとか、スロバキア、ルーマニア、それにバルカン半島もいいね、アドリア海にエーゲ海、ヨーロッパの貧乏な国や地域ほど、哀愁に満ちて美しい所は無いと思うんだ。それで、そんな所なら、ひとさらいだってまだ居るかもしれない、そんなひとさらいから、人を買う、髪はまるでくすんだ真鍮のようで、目は空ろな東京の空の色、そういう娘を本当はメイドさんにしたかったのさ。」
「ご命令とあらば、このわたくし主人様のために、髪を染めて、カラーコンタクトを入れますが?」
「いいんだ、冗談だよ。きっと何だかんだ言って嬉しいんだと思うよ。さあ、着替えてもらおうか、メイド服はそこの箪笥の奥に眠っているよ。」



8月11日(土)21:25 | トラックバック(0) | コメント(0) | 私小説 | 管理

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